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『今この世界を生きているあなたのためのサイエンス T』
著:リチャード・ムラー
訳:二階堂行彦
刊行日 2010/9/2
四六判(188o×130o)ハードカバー。256ページ。 本文1色刷。
ISBN978-4-903063-45-4 C0098
1429円(税込1572円)

 

概要
カリフォルニア大学バークレー校「学生が選んだベスト講義」!

・「もうじき石油が枯渇する」は本当か?
・北朝鮮の核開発はどこまで進んでいるのか?
・「クリーンで安全な原発」はつくれるのか?
・快適な生活と地球温暖化対策を両立する方法とは?
・科学的にみて、将来性のあるテクノロジーはどれか?
・2100年に世界人口が100億になったとしても、エネルギー効率を年2〜3%アップしていくことで、全人類が欧州水準で生活できる!

エネルギー問題、テロリズム、地球温暖化など、地球上に住む誰もが無関係ではいられない問題を取り上げ、最新科学に基づいて要点と展望を解説。
インターネットで公開され世界中の人々から大反響を呼んだ、名講義の日本語版。

「著者まえがき」より
あなたは、科学と聞くと、しり込みしてしまうほうでしょうか。ハイテクの話になると、途方に暮れたりすることはありますか。今日では、多くの重要な決定にハイテクがかかわっています。太陽エネルギーや、石炭からガソリンをつくる方法について知らなければ、自分たちの国をクリーンエネルギーの未来に導くことはできません。
本書では、知っておくべき最先端の科学を取り上げています。数学は省略しましょう。基本原理を理解してしまえば、もう二度とハイテクをこわがる必要はありません。
その緊急性と、エネルギー問題に直結する点を考慮して、まずテロリズムを取り上げます。二番目のテーマはエネルギー問題です。エネルギーと関連するのが、三番目のテーマの、原子力の問題です。四番目に宇宙と衛星。そして最後に、地球温暖化を取り上げましょう。地球温暖化に関しては、デマも広く流布されています。そうした間違いは間違いとして切り捨てる必要があります。
  ときには理解しにくいことにぶつかるかもしれませんが、考えすぎないでください。飛び込んでみて、試行錯誤しながら、その中を泳ぎ進み――そして何より――楽しんでください。

著者紹介
リチャード・A・ムラー(Richard A. Muller)
カリフォルニア大学バークレー校の物理学教授。マッカーサー・フェロー賞(別名「天才賞」)の受賞者。政府の筆頭顧問を長年務める。米国国会が全米科学アカデミーに要請して行われた地球温暖化の証拠の見直し作業においては、見直しを第三者として審査する審査官を務めた。また、米国PBS(公共放送サービス)や英国BBC放送の多くの特別番組やドキュメンタリーに専門家として出演している。
本書は、著者が文科系学生を対象に行っている有名な講義(学生の投票によって決まる「バークレー校のベスト講義」に選ばれた)をベースにしたもの。なお、著者の講義の様子は大学によってWEBで無料公開され、YouTubeなどで誰でも視聴できる。世界中の人々がこれを見て、著者のもとにはこれまでに87ヵ国にも及ぶ国の人々からの反響が寄せられている。

原著
Physics for future presidents: the science behind the headlines, Norton, 2008

訳者紹介
二階堂行彦(にかいどう・ゆきひこ)
翻訳家。主な訳書に『Webアプリケーション開発教本:PHP and MySQL編』、『最新ロボット工学概論』(以上、センゲージ・ラーニング)、キティ・ファーガソン『光の牢獄――ブラックホール』(ニュートンプレス)、『スーパーヒューマン――人体に潜む驚異のパワー』、ダイアン・アッカーマン『いのちの電話――絶望の淵で見た希望の光』(以上、清流出版)などがある。

 

目次
はじめに 3

●第一講 テロリズム 
1 九・一一事件──何が起きたのか? 
*ビル崩壊の主原因は飛行機衝突ではなかった 
*崩壊の主原因はジェット燃料から放出された高エネルギーと高熱 
*大爆発は起こらなかった。
  起きたのは、高熱による物体の不安定化と鉄骨の湾曲 

2 テロリストと核兵器 
*テロリストが小型核兵器を一から設計・製造できるとは
  考えられない 
*高純度のウランかプルトニウムを入手しても、
  優秀な技術者がいなければ製造は不可能 
*北朝鮮の原爆実験は失敗だった。 
  設計の二〇分の一以下の不完全爆発 
*小型核兵器によるテロが行われても、
  九・一一事件を大きく上回る被害にはならない 
*大型核兵器の製造はテロリストレベルでは不可能 
*核兵器が盗まれ密売された場合の危険性 
*放射能汚染爆弾によるテロは比較的容易。
  大きな被害にはなりにくい 
*放射能汚染爆弾については、過剰反応が危険 
*真の脅威──ならず者国家による核兵器開発 

3 バイオ・テロ 
*天然痘テロ──きわめて危険。
  実行されれば最大の犠牲者は発展途上国の人々に 
*炭疽菌テロ──手紙一通に
  推定二〇〇〇万人分の致死量の菌が入っていた 
*炭疽菌テロ──数億人分の致死量の菌がまかれたが、
  死者は五人だった。なぜか? 
*炭疽菌テロの真相──いくつかのシナリオ 
*バイオ兵器は核兵器より入手・製造しやすく使い方も容易 

●第二講 エネルギー問題
4 エネルギー問題の知られざる真実@ 
*石油の最大のメリットは、エネルギー量の大きさ 
*ガソリンと食物のエネルギー量比較 
*ガソリンと代替エネルギーのエネルギー量比較。
  もっとも有望なのはブタノール 
*ガソリンとその他エネルギーとのエネルギー量比較 

5 エネルギー問題の知られざる真実A 
*エネルギーの「量」と並ぶ重要ポイントは、
  それが一定時間内にこなせる仕事量(仕事率) 
*馬一頭の仕事率=一馬力=一キロワット(一〇〇〇ワット) 
*アメリカの総発電量は四五〇〇億ワット。
  一〇億ワットの大型発電所が四五〇基必要 
*石油に代わるエネルギーを考えるなら、まず現状の
  エネルギー「用途」とエネルギー「源」を知る必要がある 
*「脱石油」実現の最大の課題は、
  代替エネルギーのコストを石炭以下に抑えること 

6 太陽エネルギー 
*誤解の多い太陽エネルギーに関する基本的事実 
*ソーラーカーの実用化は未来永劫ありえない 
*家庭用太陽電池普及のカギは、コスト低減と電池の長寿命化 
*太陽電池利用型発電所の成否のカギは、
  電池のコスト減と特殊材料の確保 
*太陽熱利用型発電所の成否のカギも、やはりコスト減 

7 石油の終焉? 
*「もうじき石油が枯渇する」は本当か? 
*石炭から石油をつくる「フィッシャー・トロプシュ法」を使えば、
  石油は数百〜一〇〇〇年以上もつ 

●第三講 原子力 
8 放射線の基礎知識 
*放射線量二〇〇レムの被爆で病気に。
  三〇〇レムなら死亡確率五〇パーセント 
*ふまえておくべき「閾値効果」 
*放射線を不必要に恐れるべきではない。
  低レベルの放射線は自然環境の一部 
*放射線とガン──ガンと放射線には
  どの程度関連があるのか? 
*チェルノブイリ原発事故──住民三万人が平均四五レムを被爆。
  事故による住民のガン死は約五〇〇人 
*住民を避難させたのは正しい選択だったのか? 
*事故によるガン死は推定総計四〇〇〇人。住民にとって
  より深刻な、ストレス・喫煙・飲酒によるガンと心臓病死 

9 放射性物質の基礎知識 
*原子核の爆発により放射線が放出され、
  放射性物質の「放射性」が「崩壊」していく 
*放射性物質が元のレベルの半分になるまでの時間を
  「半減期」という 
*半減期が一回過ぎれば放射性物質の危険性は二分の一に、
  一〇回過ぎれば一〇〇〇分の一になる 
*原発事故の際にもっとも危険なのは、
  半減期が中間の長さの放射性物質 
*さまざまな放射性物質と
  半減期の長短に由来する危険性/利便性 
*放射線で人間が突然変異するとか、チェルノブイリでは
  先天性欠損症が多く見られるという説は、本当なのか? 

10 核兵器を知る@
*核兵器の三タイプ──ウラン爆弾、プルトニウム爆弾、水素爆弾 
*爆発のカギは「核連鎖反応」──
  高エネルギーを出す核分裂の連鎖──を起こせるかどうか 
*原子爆弾の誕生──第二次大戦とマンハッタン計画 
*アメリカの原爆製造成功のカギは
  「臨界質量」を少なくする方法を考案できたこと 
*ウラン型(広島型)核爆弾──
  構造は単純。比較的簡単につくれる 
*ウラン型(広島型)核爆弾──
  難しいのは高純度のウラン235の精製・入手 
*ウラン濃縮の二つの方法 
*最新のウラン濃縮法「遠心分離法」。
  パキスタンから北朝鮮などに供与されたのがこの技術 

11 核兵器を知るA
*プルトニウム型(長崎型)核爆弾──
  プルトニウムの抽出・入手は比較的簡単 
*プルトニウム型(長崎型)核爆弾──
  設計は困難。北朝鮮の実験失敗も不純物による「早すぎる爆発」 
*「早すぎる爆発」の解決策「爆縮」には、
  著しく高度な技術が必要 
*「爆縮」を成功させられるのは国家レベルの組織。
  テログループでは無理 
*水素爆弾──「二段階の爆発」で核融合を起こす爆弾 
*水素爆弾の設計を可能にした二つの機密技術 
*水素爆弾の放射性降下物と爆風はきわめて危険 
*史上最大の爆弾──ソ連の水爆 
*実は爆弾は小さいほうが破壊力が大きい 

12 原子力@ 
*感情論に陥らないために事実の理解が必要 
*核爆弾は核連鎖反応を「一気に」起こす
  原子炉は核連鎖反応を「持続的に」起こす 
*核爆弾には高純度(核兵器級)の核燃料が必要
  原子炉は低純度(原子炉級)の核燃料でよい 
*多くの人が原子炉は「原爆のように爆発しうる」と考えているが
  それはありえない 
*原子炉が「ダイナマイトのように爆発する」ことはありうる。
  チェルノブイリで起きたのがそれである 
*原子炉内では、ウラン→ネプツニウム→プルトニウム
  という変換が行われつづける 
*「再処理」とは、廃棄物からプルトニウムを抽出すること。
  北朝鮮が事前同意に違反して行っているのがこれ 
*高速増殖炉──「原爆のように爆発しうる」タイプの原子炉 

13 原子力A 
*「チャイナ・シンドローム」という仮説──
  冷却材流出事故による最悪の事態の想定 
*スリーマイル島事故の現実──
  冷却材流出事故によって実際に起きたこと 
*チェルノブイリ──設計上の欠陥による
  「反応度事故」(核連鎖反応の暴走) 
*「冷却材流出事故」も「反応度事故」も心配不要。
  安全なペブルベッド型原子炉 

14 核廃棄物 
*核廃棄物について、反核の立場から考えてみる 
*核廃棄物に関するわたしの見解──地下貯蔵計画を進めるべき 
*プルトニウムの毒性は過大評価されがち。
  胃から吸収されるという俗説も間違い 
*劣化ウランに関する事実と議論 

15 核融合制御 
*核融合制御実現のための三つの方法 
*A トカマク核融合炉 
*B レーザー核融合 
*C 常温核融合 

 

U巻 目次

●第四講 宇宙空間の利用
16 衛星の基礎知識@
17 衛星の基礎知識A
18 重力を応用したテクノロジー
19 人類の宇宙進出
20 不可視光線による監視

●第五講 地球温暖化
21 温室効果
22 証拠@
23 証拠A
24 役に立たない解決策
25 誰にでも実行可能な解決法@
26 誰にでも実行可能な解決法A
27 新しいテクノロジー

 

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